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最高裁判所第二小法廷 昭和29年(す)488号 決定 1954年12月24日

本籍並びに住居

長野県埴科郡松代町字岩野八三八番地

現在長野刑務所在所

申立人

中沢薫鷹

右の者に対する詐欺被告事件について、昭和二九年九月八日当裁判所のした上告棄却の決定に対し申立人から執行異議の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件申立を棄却する。

理由

本件異議申立の理由は別紙記載の通りである。

裁判の執行を受ける者の執行に関する異議の申立は刑訴五〇二条により刑の言渡をした裁判所にすべきところ、右にいわゆる言渡をした裁判所とは執行すべき刑の言渡をした裁判所を指称すること明らかである。そして本件被告事件については昭和二八年一〇月一六日長野地方裁判所上田支部において懲役一年(未決勾留日数中三〇日を刑期に算入)、同二九年二月二五日東京高等裁判所において控訴棄却の各言渡をし、同年九月八日当裁判所において上告棄却の決定がなされたもので、当裁判所においてはもとより刑の言渡をしないのであるから、執行に関する本件異議申立は刑を言渡した長野地方裁判所に対しすべきものである。されば本件異議申立は結局不適法であるから裁判官全員一致の意見により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

刑執行手続に対する異議申立書

長野刑務所在監人

受刑者 中沢薫鷹

右私コト、本年九月十八日上告棄却決定の通知の送達を受けました所其の後何の御通知もなく本年十月十八日に至り急に執行の通知を送達され十月二十三日より刑の執行を受け現在に至つて居ります。

此の執行通知書送達により始めて間違つた手続と言ふ事がわかりました。以上左の通りで有ります。

(一) 本年九月八日上告棄却決定が有り私に送達されたのが九月十八日(松代郵便局より)で有りました。

それで執行通知書によりますれば、九月十九日に確定となつて居りました。以上は私に上告棄却通知書送達の日より起算して十日間早やすぎました。

以上で有りますから、確定日起算が違つて居ります。

(二) 確定通知が現在まで有りません之も違法と思ふ。

(三) 確定が九月十九日に有つたものを執行を十月二十三日からしたのは如何なる訳か。

確定通知があればすぐ執行(刑の)に応じられたのに右通知がなかつたため一ケ月余り受刑がおくれ都合上損をした。

右三項を篤と御審議下さい。

昭和廿九年十一月三十日

右 中沢薫鷹

最高裁判所御中

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